Malleus&Tsubaki

Pains of Iove be sweeter far than
all other pleasures are.

introduction








とある魔法士養成学校にて












一人の少女と、一匹の妖精が出逢うまでのおはなし













茨の谷の王子、かつ世界でも五本の指に入る魔法士と謳われるマレウスは入学当初から一目置かれていた。それどころか人間離れした長躯と美麗な見た目も相俟り新入生はおろか、在校生にも恐れられ距離を取られる始末。マレウスの唯一は同郷出身で御目付け役のリリアだった。現状を見兼ねたリリアはマレウスに助言を与える。「そう不貞腐れず、おぬしもヒトと関わる努力をせい。
おぬしが心を許せば、理解してくれる人間も現れるはずじゃ。」「…リリア、僕は別に不貞腐れてなどいない。
それに人間が僕を恐れるのは、いつものことだ。」
「そう云うな、マレウス。おぬしにもきっと、______。」



時を同じくして、入学した少女がひとり。


そんなマレウスなどは露知らず、椿は静かに、しかし確実に名門NRCでの生活を満喫していた。友人と呼べる存在はと訊かれると怪しかったが、そんなことは些末な問題である。
彼女はひとりを好み、穏やかな時間を愛した。
立派な図書室の書庫に収められた貴重な資料の数々。四季の木々花々が咲き誇る植物園。伝統に重きを置くうつくしい寮…尽きない興味と好奇心を満たすには十分すぎる環境が、椿の日々を彩った。


それなりに学園での生活に慣れてきた頃_椿の日常は一変する__というほどではないが、確かな変化が彼女と、一人の男の内で起こった。ことは、数日前に遡る。


その日、椿は目に見えて、明らかに、浮き足立っていた。
なんてったって図書室の最奥、禁書庫の区域に足を踏み入れる権利を得たのだ。頑なに首を縦に振らないトレイン先生との一週間の攻防。勝利の悦びと期待にはやる心をおしこみ、重厚な扉の前に立つ。予め教わった魔法式で錠を解き、最後の関門、小さな鍵穴に細やかな装飾が施された鉄の棒をえいと射し込んだ。
どんな本があるのかしら。未知への期待と、若干のおそれの為に冷たくなった指先でドアノブを握る。
ゆっくりと開いた扉の先_____に貴方は、いた。
するりと手から離れた鍵が、足元で跳ねた。

それが、はじまり。


キン と落ちた鍵が響かせた、金属特有の音でその人はこちらを振り返った。ライトグリーンの瞳が突然の侵入者の存在をみとめ、驚いたように見開かれる。『あ…』ぽかんと小さく口を開けたまま固まるわたしはこの美丈夫の眼に大層間抜けに映ったことだろう。ん?あれ、わたし、この人を知っている。
____マレウス・ドラコニアさん。
その麗姿と名前を合致させるのに、大して時間はかからなかった。彼は、私の故郷、極東のちいさな国でもその名を知られるほどに有名だったから…それと、普通に同寮だし。
なんならクラスメイトだったので。


『驚かせちゃって、御免なさい。
まさか、人がいると思わなくて。』
「いや、気にするな。ここは滅多に人の出入りがない
からな。珍しい客人だ。」
『…』
「…」
会話が途切れ、部屋が静寂に包まれる。
……。……ん?
『あの、貴方…1年生、というか、
同じクラスのドラコニアさん…ですよね?』
「そうだが。」
『客人って…なんでここの管理者みたいな口振りなんです…
大体、1年生でこの部屋の入室を許可した生徒は
わたしが最初だって、トレイン先生が…』
「ん?ああ。確かに、この部屋には望まぬ者の侵入を阻むような
呪(まじな)いがかかっていたな。人が来ないとは思っていたが…
そうか、入室は教員の許可制だったのか」
『…!?まあ!』
このひと、今、涼しい顔をしてとんでもないことを言った。彼の言う通り、この部屋には複雑な魔法陣が幾重にもかけられている。
並大抵の魔法士では破ることの出来ない高度な魔法式。
でもこの人はなんでもないように、それこそただドアノブを捻った、位のテンションで解呪していたのだった。
『し、信じられない…』
悪気は無さそうだし、本人は人気が無く貴重な本に溢れた退屈しのぎにぴったりの場所、くらいの認識だったのだろう。
だがここは禁書区域。本来ならば教員の許可が無いと立ち入ることすら許されない場所。もしもこの事がバレたら…最悪を想像してサアっと血の気が引いた。十中八九とばっちりをくらうことになる、私が。弁明が聞き入れられることはないだろう。なんてったってここはNRCなのだから。
『あの、わたし、見なかったことにしますから。』
ね、だから速やかに退室してください。
今ならまだなかったことに出来ます。
ぎこちない笑顔で退室を促す私をドラコニアさんは
面白そうに見つめてくる。
「気遣い痛み入るが。たった今その必要が無くなったようだ。」
愉しそうな声音でそう告げる彼の視線を辿って確信した。
時既に遅し。




一蓮托生、死なば諸共。聞こえはいいが要は二人仲良くお説教。
「お前には迷惑をかけたな。すまなかった」
『ふふ、連帯責任という言葉が大嫌いになりました』
夕暮、ディアソムニア寮へと続く道、肩を並べて歩く男女が一組。被った猫の皮が剥がれかけている女とそんな女を面白そうに観察する男。「この短時間で随分と言葉に遠慮が無くなったな。この僕にそんな物言いをするとは、余程の恐れ知らずなようだ。」『』

profile








藤江 椿



東洋の血を引く少女。人間
故郷は非魔法士が大半を占めており、
魔法を日常的に使用しない環境で生まれ育った。


学年・クラス 3年D組13番
誕生日 12月14日(射手座)
年齢 18歳
身長 156 cm
出身 東方の国
部活 映画研究会
得意科目 魔法史
苦手科目 体力育成
趣味 洋服蒐集
好きな食べ物 スコーン
嫌いな食べ物 海鮮全般
特技 速読

腰までの黒濡髪と烏珠の瞳がミステリアスな女の子。常に微笑を浮かべている。が外側に昇華させるのが苦手
なだけで十二分に感情的だし激情を心の内に燻らせている。
ちょっぴり精神的に脆く繊細なハートの持ち主
聡く落ち着いた言動が目立つ。しかし意識的にそう振舞っているだけで内面は年相応に幼く未熟。親しい人の前ではちょっとだけワガママで、ちょっとだけ感情表現が豊かになる。交友関係は狭く浅い
愛想が良く大抵の人間と良好な関係を築けるが根本的に
人付き合いがかなり苦手。その為深い関係にある友人は極極小数。
外で常に気張っている反動と根底にあるひとに甘えたい
という気持ちから心を許した人には口数もスキンシップも多く、
ついでに距離も近くなる。典型的な内弁慶。
かなりのロマンティストで純文学に傾倒している。
種類問わず"うつくしいもの"に尽きない憧憬の念を抱く文化人。
ちなみに魔法はうつくしいので好き。
趣味は洋服蒐集読書。どちらもひとりで粛々と楽しめるから。
同じような理由でお散歩をするのも好き。
和洋問わずスイーツが好きで眠れない夜は一人
お茶会をすることも屡々。最近はそれに付き合ってくれる
ひとがいるのでティーセットを新調した。

マレウス・ドラコニアドラゴンの妖精。茨の谷の次期国王。
日常的に魔法が使用される環境で生まれ育った。その為家電や電子機器はほとんど扱えない。
学年・クラス 3年D組6番
誕生日 1月18日(射手座)
年齢 178歳
身長 202cm
出身 茨の谷
部活 ガーゴイル研究会
得意科目 防衛魔法
苦手科目 特に無し
趣味 廃墟巡り
好きな食べ物 氷菓
嫌いな食べ物 ホールケーキ
特技 弦楽器

relation

image song

あなたに染められて纏う漆黒のドレス
今までの自分が知らない自分になる
迷いながら 戸惑いながら あなたに惹かれて止まらない
囁く声切なく甘い 傷つくとわかっていて ほどけない
漆黒 / 藤田麻衣子



ここは僕だけが知っている秘密のミシュメリア
何処行くの 迎えにきたよ さあ一緒に
ゆらぐ 甘い香り ゆらぐ 頭からつま先まで
わたし 怖くない場所を探して ここに迷い込んで来たの
ミシュメリア / 藍月なくる



時間が音をたてながら 崩れてゆく最後を
君は何故か悲しそうに 笑いながら踊る Wonderland
Alice in 冷凍庫 / Orangestar



孤独に慣れ親しんだこの身が 日だまりで溶けるのを許さない
行き交う群衆に愛を蒔いて
永遠に涙を紡ぎ続けて
またあなたに会えるその日まで何千年先も待ち続ける
The Beast. / スペクタクルP